リハビリテーション科

痛みにより低下した身体機能を向上させることで、「また散歩ができるようになった!」「仕事に復帰できた!」など、皆さまの目標に応じた「豊かな生活」を目指します。

リハビリテーションとは

リハビリテーションとは

リハビリテーションといえば脳卒中後に出現する手足の麻痺を改善させる運動や歩行練習、もしくは整形外科での物理療法(電気治療や牽引療法など)をイメージされると思いますが、本来は「その人にとって再びふさわしい状態になる」ということが語源です。

当クリニックでは「運動器リハビリテーション」と呼ばれる筋肉や関節運動を中心としたリハビリを行っていきますが、痛みを取るだけでなくご自身の生活に目を向け、痛みに関連する身体機能の改善や動きの再獲得、痛みの再発予防を行います。病気だけを診ずに、患者さん全体を考え痛みによって妨げられた豊かな生活を取り戻していきます。 

2階リハビリ室 リハビリテーション科
痛みのリハビリテーション部門

当クリニックリハビリテーション科では「自分で動く運動療法」を中心にしています

痛みが続いているときに運動のリハビリを行うとむしろ痛みが強まってしまうのではないかと思われますが、痛み治療が進んだ海外では治療にリハビリテーションプログラムが組み込まれているのが一般的です。運動を中心としたリハビリテーションは身体を強くするだけでなく心理面にも好影響があり、すっきりした気分になり体が軽くなります。多くの臨床研究からも、慢性的な痛みになるほど受動的な治療(やってもらう治療)は効果が低く、自分で動く運動療法の方が痛みの軽減や生活の質改善に効果があると言われています。したがって当リハビリテーション科では受け身の治療となりやすいものはあえて使わずに、痛みと向き合える心身をつくることを心がけています。もちろん痛みの状態や改善具合に合わせて行いますので、無理をさせることはありませんのでご安心ください。
背部痛 理学療法診療ガイドライン(日本理学療法士協会より引用)

慢性腰痛に対する運動療法(推奨グレードB)は、疼痛と機能障害の改善にわずかながら有効とされている(Hyden JAら 2005など)。運動療法のうち、アクティブリハビリテーションは慢性非特異的腰痛有訴者の疼痛を軽減し、1年後までの長期効果を有する(Kankaanpää Mら1999)。また、腰部ニュートラルゾーンの管理を重視した運動療法は、反復性非特異的腰痛を有する中年男性の疼痛を軽減し、作業能力を改善させる(Suni Jら 2006)。

慢性痛リハビリテーションに特化した理学療法士による評価と運動指導

日本理学療法士協会・認定理学療法士(運動器)を取得し、整形外科クリニックやNTT東日本関東病院で慢性痛リハビリテーションを経験した理学療法士が、痛みに関連する身体機能低下を理学所見から評価・判断し、痛みの改善を伴う身体機能改善・生活改善に適した運動を中心とした理学療法を行います。理学療法士とは身体機能の専門家のことで国家資格です。

慢性痛リハビリテーションに特化した理学療法士による評価と運動指導
慢性痛リハビリテーションに特化した理学療法士による評価と運動指導

集学的リハビリテーション

神経障害性疼痛などのように痛みが強く慢性的に引き続く場合は、リハビリによる身体機能改善と痛みの治療(ペインクリニック)と心理的サポート(臨床心理士)で総合的に治療をしていきます。これを「集学的リハビリテーション」といい、慢性痛に効果が高いといわれています(推奨グレードA)。 当クリニックでは、専門的な痛みの治療、心理的サポート、運動療法のリハビリと大学病院レベルの集学的リハビリテーション行える体制が整っています。

集学的リハビリテーション

(Stanton-Hicks 2002を改編・引用)

背部痛 理学療法診療ガイドライン(日本理学療法士協会より引用)

早期の集学的リハビリテーション(推奨グレードA)は,慢性化するリスクの高い急性腰痛患者において,疼痛と機能障害を改善し,社会・経済的損失(復職,医療機関の利用回数,薬物使用量から算出)を減少させる(Gatchel RJら 2003)。

「散歩とかスクワットはしています。どんな運動をしていくのですか?」

リハビリテーション

リハビリテーションでは、患者さん全体をみて目標に応じてプログラムを作成していきます。通常、痛みを伴う疾患の場合、痛み・しびれの原因を病気がある部位に求めることが多くなります。一方でリハビリでは痛みと体の状態をまったく逆に考えます。関節や筋肉などからだの各部位の「動きの悪さ」が痛みを作っているのではないか、このような考えを基にストレスがかかる部位や機能低下を起こしている部位を診察し、原因を見つけていきます。痛みのある部位に影響するからだ全体の異常な動きを見つけることで緩和されるという「運動機能障害症候群」の考えをもとに、負担のかかっている痛みの部位へのストレスをみつけ分散させてきます。したがって、体の特徴をしっかり感じていただいて、自分で動いて身体機能を向上していきます。ご自宅での自主トレーニングで継続していただくこともとても大事なことです。   背部痛 理学療法診療ガイドライン(日本理学療法士協会より引用)

運動療法プログラムの設定については,筋力や筋の伸張性などに関する個々人の評価に基づき設定されたホームエクササイズプログラムが,一般的な腰痛教室よりも疼痛や機能障害を有意に改善させる(Descarreaux M 2002)ことから,個別にプログラムされたストレッチングや筋力強化などの運動と管理は,疼痛と機能障害の改善に有効である(Hyden JAら 2005)。

当クリニックで行っている運動療法の例

・「あかちゃんトレーニング」を基本にした脊椎の機能改善エクササイズ
(高齢者からトップアスリートまで行っている運動療法です)
・痛みの原因となりやすい動きの偏りを修正する運動パターンの改善エクササイズなど
・アクティブモビライゼーション(軽い力を使って関節のゆがみを整えます)
・トレーニング機器/バランスボール/ストレッチポール/セラバンド/バランスシューズ/エアロバイク
その他の機器も導入予定です。

当クリニックで行っている運動療法の例

あかちゃんトレーニングの例(腰痛や肩痛や下肢痛に対して)

まったく動かさないとどうなってしまうのか

痛みの原因に神経が関与した神経障害性疼痛の場合、痛みが強く「ネグレクト」と呼ばれる運動障害がおこることがあります。痛みがある部位が重たく感じたり、最大の力を出さないと手足が動しにくい状態のことです。最近の研究では痛みが出た後に動かさないことがネグレクトや新たな痛みを起こしてしまうとの報告もあります。出来るだけ早期からリハビリを始めるとよいというのはこのためです。

また、心理的な痛みの悪循環を示す図をご覧ください。痛みが出てしまうと誰もが心配するのは当然なことですが、様々な情報に惑わされ不安が強まると余計に痛みが強まってしまいます。このことが原因で体の不調は良くなっているのにもかかわらず、痛みと恐怖感だけが残ってしまう方もいます。特に腰痛で多くの研究報告があり、過剰な心配や痛みへのこだわりが慢性的な腰痛を引き続かせる「こじれた痛み」の状態をつくります。

このような場合、恐怖感を伴うことがある方には段階的な運動療法(背部痛への推奨グレードB)をしていくことが効果的だとの報告があります(George 2003)。また、痛みに対する考えを整理したりするのに心理療法が効果的になります。とはいえ、この痛みが動かしていいものなのかそうでないか迷ってしまいますので、悩まれる前にお早めにぜひご相談ください。

「痛みからの回復には不安なく痛みに向き合うことが重要です」

「痛みからの回復には不安なく痛みに向き合うことが重要です」
(Vlaeyen & Linton 2000を改編・引用)

リハビリテーションが効果的な症状

(医師の診察を受けていただき、医師の指示に基づきリハビリを行います。予約制です。)
<頭・頚>頭痛(筋緊張性頭痛など)・めまい(運動療法の適応があるもの)・顎関節痛・頚部痛・むちうち関連症状など
<肩・上肢>肩こり・肩関節痛・五十肩・上腕・肘関節痛・手関節痛・腱鞘炎(慢性)・上肢のしびれ・冷感など
<体幹・下肢> 背部痛・腰痛・骨盤痛・臀部痛・下肢痛(坐骨神経痛)・股関節痛・膝関節痛・足関節痛・足底の痛み・外反母趾の痛み・下肢のしびれ・冷感・足のつり(有痛性筋けいれん)など
<その他>骨折後に引き続く痛み・関節拘縮・筋力低下・人工関節手術後の痛み・関節拘縮・筋力低下・脳卒中後やCRPSなど神経障害性疼痛の痛みを伴う運動障害・スポーツ中の痛み(アキレス腱痛・シンスプリント・オスグッドシュラッター病など)成長痛・使いすぎ症候群

痛みが続くと柔軟性や筋力が低下し、からだが支えられず痛みが改善しにくくなります。

痛みを治療しながら、目標に応じた豊かな生活を目指します。

リハビリ室

当院では 2014 年から痛みのリハビリテーションを開設し、ペインクリニックと組み合わせた運動療法を提供しています。
特に力を入れているのが、一人ひとり異なる患者さんの状態に合わせて実践し、効果を持続させる自宅での運動療法の提供です。この2つを組み合わせで体の機能を改善するとともに、通院頻度の負担は少なく治療効果をアップさせます。

リハビリテーションとは

本来のリハビリテーションの語源は「その人にとって再びふさわしい状態になる」ことです。

理学療法士協会リンク

当院ではその中でも痛みに効果が高い、リハビリテーションを医師の指示の下に行っていきます。

などを目標にして、痛みによって妨げられている豊かな生活を取り戻していきます。

リハビリテーション開始までの流れ

  • 1

    ペインクリニック科の治療開始後、適応に応じて医師よりリハビリテーション開始指示が出ます。
    ※リハビリテーション希望で受診予定の方は、初診予約時にその旨をお伝えください。(046-261-0867)

  • 2リハビリテーションの初診(診断・評価)

    ペインクリニック医師と協働して行います。痛みがある部位やそれ以外の体の機能を確認します。

  • 3運動療法の実施と通院ごとのアドバイス

    痛みに関連する身体機能を評価します。自分で取り組む運動療法。必要性やご希望に応じて1~2週間に1回リハビリテーションに受診し、状況に応じて運動療法の種類や負荷量を調整します。不安がなく行える運動療法を継続して、痛みをコントロールしていきます。

  • 4ご自宅で継続する運動療法をご提案

    取り組みやすい運動を提案し、ご自宅でも取り組めるようにします。
    取り組みを継続する:アドヒアランス

  • 5リハビリテーションの通院頻度と期間

    保険診療の運動器リハビリテーションは150日間行うことができます。通院頻度は症状やご希望に応じて相談して決めていきます。また、終了後のアフターケアもご用意しています。

学際的リハビリテーション

原因不明の慢性疼痛や神経障害性疼痛など改善しにくい痛みの場合、リハビリテーション(理学療法士)と痛み治療(ペインクリニック・麻酔科医)と心理的サポート(臨床心理士)の3本立てで互いに連携をとりながら総合的に治療をしていきます。
このような多職種で痛みを治療することを「学際的リハビリテーション」といい、慢性疼痛に効果が高いといわれています。このようなクリニックはまだまだ少ないですが、当院では地域医療でありながら、総合的なシステムを組み、診療を行っています。

集学的リハビリテーション

(Stanton-Hicks 2002を改編・引用)

理学療士による痛みのリハビリテーション

リハビリテーションを担当するのは国家資格を有する理学療法士です。痛みの原因を「姿勢が悪い」「動きがおかしい」「筋肉がない」などと指摘された経験はありませんか?
当院では理学療法士はエビデンスやガイドラインに基づき、個人個人に合わせた具体的な解決策を提示します。特に姿勢や動きや筋力など、身体機能が痛みに関連している場合には、痛みそのものへの治療だけではかかるストレスが無くならず、痛みが再発することもあります。痛みのある部位に影響するからだ全体の特徴を捉えて治療に活かしていきます。また、原因不明の痛みの場合、医師と協働し診断に関わる見立てを行い、治療方法の選択に活用することもあります。

慢性痛リハビリテーションに特化した理学療法士による評価と運動指導

自分で取り組む運動療法

リハビリテーション科では、運動療法の中でも「ご自分で動いて取り組む方法」に重点を置いています。痛みの研究や治療方法が進み、現在では治療に運動療法を中心としたリハビリテーションプログラムが欠かせません。

運動療法を行うと痛みが悪化しないかと心配されると思いますが、理学療法士と相談しながら、痛みが起こる手前のレベルから行いますので安心して取り組んでいただけます。

当院で行っている運動療法の例

近年慢性疼痛を含む慢性疾患の治療において、『アドヒアランス』という考え方が重要視されています。アドヒアランスとは医師や医療従事者と相談しながら治療への取り組みを継続する力を指します。
例えば膝の痛みを起こす変形性膝関節症では、アドバイスに従い運動療法を続けていた方々と、そうでない方々の 5 年後の状態を比較すると、高いアドヒアランスを保っていた方の方がより豊かな生活を送っていたことがわかっています。
生活の中にはエクササイズへの取り組みを妨げる様々な障害がありますので、治療やエクササイズの継続率を上げるため、写真や動画で運動療法を説明するなどの工夫を取り入れています。

リハビリテーション終了後のアフターケア:エクササイズコース

運動器リハビリテーションの終了後に何もしないでいると、アドヒアランスや運動療法 を継続する力は低下していきます。その後の運動療法を継続にも力を入れています。「また痛くなってしまうのではないか」とか、「一人で運動を続けていくのに不安がある」と感じる方を「エクササイズコース」のマシントレーニングでサポートをしています。当院 では頑張る皆さまを見捨てません。
理学療法士が約20分から30分程度の運動のプログラムを組み、専任のスタッフが運動療法継続のお手伝いをします。複数の患者さんがいらっしゃり、楽しく取り組めます。同じ目標を持つ仲間の存在は、アドヒアランスや運動療法継続にもとても重要な要素です。

リハビリテーションの対象疾患例

リハビリを行う場合は必ず医師の診察を受けていただき、医師の指示に基づきリハビリを行います。

頭頚部

肩・上肢

体幹

下肢

その他

参考文献

・慢性疼痛診療ガイドライン作成ワーキンググループ編:慢性疼痛診療ガイドライン,真興交易(株)医書出版部,2021

担当スタッフ

技術向上については法人からのバックアップを受け、痛みや運動療法に関連する資格取得を奨励し研鑽に努めております。学会発表や論文投稿など学術的な活動にも力を入れています。

江原弘之

理学療法士
日本理学療法士協会・登録理学療法士/運動器認定理学療法士
日本いたみ財団認定・いたみ専門医療者
DNS アプローチ A~C コース・エクササイズコース Part1 履修
日本ペインクリニック学会
日本慢性疼痛学会
日本運動器理学療法学会 等で学会発表・論文執筆

西啓太郎

理学療法士
DNS アプローチ A~C コース・エクササイズコース Part1 履修
神奈川県理学療法士学会
日本ペインクリニック学会等にて学会発表・論文執筆

水上京子

エクササイズコース担当(月・火・木・土曜)



contact

お悩みの方はお気軽に当クリニックへご相談ください
お電話にてお問合せください